「ミレイ改革は経済の奇跡」=アルゼンチン専門家が実績を称賛

ハビエル・ミレイアルゼンチン大統領(Imagem: Agência Brasil/Reprodução)
ハビエル・ミレイアルゼンチン大統領(Imagem: Agência Brasil/Reprodução)

 アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は深刻な経済危機を打破するため、自由市場の原則に基づく大胆なショック療法を導入した。インフレ率は劇的に低下し、経済成長に回復の兆しが見え始めている。ブエノスアイレス出身のジャーナリスト、アンドレス・オッペンハイマー氏はミレイ氏の改革が「経済の奇跡」を生み出す可能性について探るコラムを22日付のエスタード紙(1)に投稿した。
 ミレイ氏は、米タイム誌「2025年世界で最も影響力のある人物」の1人選出されたが、批判者たちはこれを過小評価した。過去に金正恩やアドルフ・ヒトラーといった独裁者も同誌に選ばれたことがあるためだ。
 それでもなお、経済分野におけるミレイ氏の成果は評価されるべきだ。いくつかの失敗はあるものの、彼の自由市場型ショック療法は、80年にわたり国を疲弊させたポピュリズム政策からの脱却に希望をもたらした。
 歴代のペロン主義政権は、公共支出と政府規制を大幅に拡大し、トランプ米大統領が行ったように輸入関税を導入して経済を破壊。20世紀初頭には世界有数の富裕国だったアルゼンチンは孤立化し、貧困が進む国へと転落した。
 23年末に就任したミレイ氏は24年初頭には300%近かったインフレ率を2月には67%にまで抑え、昨年上半期は53%だった貧困率も、下半期には38%へと改善させた。国際通貨基金(IMF)によれば、本年の経済成長率は5%に達する見込みだ。
 元IMF西半球局長のアレハンドロ・ヴェルネル氏は「ミレイ氏の施策は新興国市場では前例がない。マクロ経済運営における同氏の正統派的な姿勢は、ラ米で近年見られた中でも最も強固なものだ。政府の規制緩和、介入縮小、民間部門の自由化へのこれほどの献身は数十年ぶりだ」と評価した。
 ミレイ氏は14日、長年国内で実施されていた「CEPO」と呼ばれる為替規制を解除した。この規制は、外国企業による利益の本国送還や国民によるドル購入を制限し、投資意欲を削ぎ、経済成長の妨げとなっていた。
 この緩和はIMFによる200億ドルの融資、世界銀行からの120億ドル、米州開発銀行からの100億ドルの支援と併せて実施されたものだ。アルゼンチンは過去にもIMFから多額の融資を受けてきたが、従来の政権は選挙目当ての補助金に浪費してきた。今回は、ミレイ氏がそのような誤りを繰り返す可能性は低いと専門家らは見ている。
 米国財務長官スコット・ベッセント氏は14日にアルゼンチンを訪問し、ミレイ氏の経済改革を「歴史的」と評価。「彼はアルゼンチンを破綻から救い出している」と語った。IMFのクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事は24日、ミレイ氏が進めている経済改革について「今回は異なる」と高く評価し、改革路線の維持を強く求めた。同氏はIMFによる支援を維持する意向を示し、アルゼンチンが改革を維持することで、経済成長と国民の福祉が向上すると述べた。(2)
 だが、改革を妨げる要因も残されている。10月の国会議員選でミレイ氏の政党が苦戦すれば、27年にペロン主義が政権に返り咲くことを投資家が懸念し、投資が停滞する可能性がある。
 ミレイ氏がジャーナリストや経済学者、議員に対して侮辱的な言動を取る点もリスク要因だ。彼が左派やペロン主義の批判者ではなく、むしろ自身を支持しつつ一部の政策を批判する中道右派の人物を標的にする傾向があるとされる。
 ミレイ氏が真に成功したと評価されるのは、27年の大統領選に勝利し、31年に自身の経済政策を継承する民主的に選ばれた後継者に政権を譲ったときだ。気性を抑え、それを成し遂げることができれば、ミレイ氏はアルゼンチン史に名を刻む偉大な大統領の一人となる。

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