「現場でつなぎ、伝えた2年間」=JICAボランティア・松田亜弓さん=ブラジルでの活動を報告

報告する松田亜弓さん

 独立行政法人国際協力機構(JICA)のボランティア隊員として2023年5月よりブラジルに派遣されていた松田亜弓さん(北海道出身)の帰国前報告会が、16日午前11時からブラジル日本語センターで開催された。報告会には、松田さんが任期中に関わったJICA、南日伯援護協会、ブラジル日本語センター、ブラジル日報の関係者ら17人が、オンラインを含めて参加した。
 松田さんは、北海道の地方紙で記者として勤務する中で、「世界をもっと知り、記者として成長したい」との思いからJICAボランティアに応募。新型コロナウイルスの影響もあり、実際の派遣までに3年を要した。最終的には編集業務の募集に応じ、リオ・グランデ・ド・スル州州ポルトアレグレ市にある南日伯援護協会へと派遣された。
 現地では、地域の日系社会をつなぐ機関誌の編集を担当。読者アンケートを通じて内容の充実を図ったほか、SNSを活用して高齢者教室や日本語学校との連携イベントの告知や活動報告を活性化させた。特に高齢者教室では参加者数の増加が顕著で、着任当初は平均10人だったのが2024年4月には平均18人まで増加したという。
 生活にも慣れ、地域社会が少しずつ見え始めた矢先、リオ・グランデ・ド・スル州州では洪水が発生。松田さんの派遣先もポルトアレグレからサンパウロへ変更となり、2024年5月から7月まではブラジル日報にて主にリオ・グランデ・ド・スル州州の洪水被害に関する記事を執筆した。SNSへの投稿を通じて読者の支援を呼びかけた結果、寄付を申し出る人々も現れ、「メディアの発信力を実感した」と振り返る。
 その後、ブラジル日本語センターに配属されてからは、同センターのホームページやSNSで事業の発信に携わり、そのマニュアルも作成。日本語教育支援の一環として、「学習状況調査」を実施し、サルバドールおよびポルトアレグレで開催された日本祭りにおいて、計603人からの回答を得て、結果をホームページで公開した。南日伯援護協会の機関誌編集業務も継続し、日本語センター関連や洪水後の南日伯援護協会に関する記事をブラジル日報でも発信し続けた。

 松田さんは、「この2年でご縁ができた場所での活動に今後も携わり、関係を継続できればと思います」と今後への抱負を語った。
 ブラジル日本語センターの矢野敬崇理事長は、ブラジルの日本語教育が抱える課題として「マーケティングの不足」を挙げた。教師の質や人数には問題がないものの、対内外への情報発信力を含むマーケティング人材の不足が、日本語教育全体の課題で、今後も同センターに必須要員であるとの見解を示した。

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