逃亡劇から5年後のゴーン=「私は無罪」教育とワインに邁進

2014年のカルロス・ゴーン氏(Foto: Thesupermat, via Wikimedia Commons)
2014年のカルロス・ゴーン氏(Foto: Thesupermat, via Wikimedia Commons)

 かつて日産とルノーのトップとして名を馳せ、前代未聞の逃亡劇で世界を驚かせたカルロス・ゴーン氏(71歳)。逃亡から5年が経過した現在、レバノンにおいてワイン事業に投資しながら、今なお無罪を主張し、自らを「陰謀の被害者」であるとの立場を取っていると26日付CNNブラジルなど(1)(2)が報じた。
 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」によれば、現在ゴーン氏はレバノンの首都ベイルート近郊に居住し、ワイン醸造所への投資を行う傍ら、企業向け教育プログラムの講師を務めている。レバノンは自国民の国外引き渡しに応じない立場を取っており、同国籍を有するゴーン氏はその保護を受けている。
 同紙においてゴーン氏は一連の容疑を改めて否認し、「自分は日産社内の関係者らによる陰謀の標的にされた」との見解を示したうえで、「私が被害者だと理解する人々が存在することに安堵している」と述べた。
 同氏は現在、2千万ドル相当(約29億円)のピンク色の豪邸に居住し、36・6メートルの大型ヨットを所有するなど、悠々自適の生活を送っている。これらの資産については、日産側が「自社所有である」と主張している。
 ベイルート北部カスリクに所在する聖霊大学では、同氏が無報酬で約5年間にわたり講義を行ってきたとされる。同大学における「ビジネス戦略と業績―カルロス・ゴーンとともに―」と題された教育プログラムには、元ダイムラー(現メルセデス・ベンツ)の最高責任者(CEO)のディーター・ツェッチェ氏や、元ルノーCEOのティエリー・ボロレ氏など、かつてのビジネスパートナーが講師として招かれている。
 この講義の受講料はレバノン人学生に対して1万ドル、外国人学生に対しては2万ドルと設定されており、収益は大学に寄付されている。中堅管理職層を対象とした3日間の短期集中型コースといった、より手頃な選択肢も提供されている。
 現在の国際情勢に関する発言の中で、ゴーン氏は引き続き楽観的な見解を維持している。同氏によれば、トランプ大統領による関税政策は、特に中国との貿易不均衡の是正を意図したものであるが、これをもって経済のグローバル化の終焉を意味するものと解釈するのは誤りであるとし、「これをグローバリゼーションの終わりと捉えるのは、率直に言って滑稽だ」と同紙に語った。
 レバノン系の血を引くゴーン氏は、北伯ロンドニア州ポルト・ヴェーリョに生まれた。ミシュランにおける経営経験を経てルノーに転じた後、日産とのアライアンス構築を主導し、自動車業界史における屈指の名経営者としての地位を確立した。
 だが2018年、報酬の過少申告および企業資産の私的流用容疑により逮捕される事態に至った。巨額の保釈金を支払った後、東京の自宅で軟禁状態に置かれ、公判を待つ身となっていた。だがその翌年、音響機器用の箱に身を潜めて国外脱出を図り、プライベートジェットにてトルコを経由しレバノンへと逃亡した。
 この逃亡劇には米国人を含む少なくとも5人が関与していたとされ、報酬として約1千万レアル(約2億5千万円)が支払われたと報じられている。

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