
ブラジル日本移民史料館(山下リジア運営委員長)の特別展「ブラジル日系社会忍耐力のルーツ―第2次世界大戦期におけるブラジルへの日本移民」の開幕式が25日、同8階で開催され、来賓ら約40人が出席した。
石川レナト文協会長はまず、カナダから来伯した5人を労い、「日伯友好130周年、文協創立70周年の節目に、このような大事な特別展が開催できることを心から喜ぶ」と挨拶した。
これは、ビクトリア大学のアジア太平洋イニシアティブセンターが進める、世界の日系移民への人権侵害の歴史を検証する「Past Wrongs Future Choices(過去の過ち、未来の選択)」プロジェクトの一環として行われた。展示内容はカナダ移民の歴史ではなく、ブラジル日本移民に関するもの。
山下リジア運営委員長は資金協力してくれた日本進出企業に感謝の言葉を述べつつ、「戦争中の日本語書籍や書類は検閲を受け、その多くは失われました。地面に埋められ、焼かれ、散逸したからです。この辛い時期を強い忍耐力で乗り越えたからこそ、日本移民は戦後、子弟教育に力を入れ、ブラジル建国に大きく貢献でき、その結果、今のようにブラジル社会に完全な統合を果たすことができた。今回の展示は、そんな辛い時代を過ごした移民たちへの顕彰でもあります」と語った。
協賛企業を代表してトヨタESG&コムニカソンイス役員のロベルト・マタラゾ・ブラウン氏は「130周年の節目にこの様な重要な特別展に参加できることを喜びます。この様な催しへの協力を今後も惜しまないことをここに表明します」と述べた。
8階奥で特別に編集された動画を上映。9階の展示スペースでは、サンパウロ市在住の山村保生さんが2013年に寄贈した、父の遺品である臣道聯盟ヴァルパライゾ支部旗が展示された。かなり傷んでおり、実際に使われていたことを如実に感じさせる実物だ。同時に、2011年に日高徳一さんが寄贈した「勝ち負け抗争の野村忠三郎殺害時に襲撃犯の蒸野太郎が腹に巻いていた日の丸」も初めて展示された。

サビアの独り言
本来なら、戦争中の日本移民迫害の実態自体を示す展示がもっとあっても良かったが、山下運営委員長の言葉にある通り、その時代のものはあまり残っておらず、結果的に戦後の勝ち負け抗争に関する展示が中心になったようだ。ただし、勝ち負け抗争に関する特別展はかつてないことであり、それはそれで十分に価値があると言えそうだ。