「もう二度と日本には帰りたくないと思ったね」。根っからの勝ち組だった父親の薫陶を受けて育った池田収一さん(86、福岡県福岡市出身)は戦勝を信じて疑わず、父親の号令のもと、戦後移住が始まる前年一九五二年、オランダ船ルイス号で一家九人帰国した。しかし、二年後、神戸港を発つ時には、冒頭の感慨を覚え、以来一度も祖国の土を踏んでいない。五十六年前に一体、日本で何があったのか。今だから振り返ることが出来る、当時の思いを聞いてみた。(深沢正雪記者)