四百年前、アルゼンチンで奴隷扱いから逃れる裁判を起こした日本人は、日本名すら残さなかった。スペインに残った常倉恒長率いる慶長遣欧使節メンバーは、苗字のみ残した。ブラジル日系社会はなんとか百周年を過ごすことができたが、次の三百年で何を残せるだろう――。未来を〃知る〃ことはできないが、過去の延長として推測することは出来る。未来を予測するために、過去四百年から学べる教訓とは何か。この六月に迎える新しい百年紀、百一年目の移民の日という重要な節目と、日系社会のリーダーたる文協が六年の長期政権を終えて新しい木多体制に入るという重要な節目に、荒削りなのは百も承知だが、あえて叩き台として新しい日系社会試論を提言する。(深沢正雪記者)