2008年8月5日。日本移民百周年の記念すべき節目の年に高校野球の聖地に立ったひとりの日系三世が、ド派手なフェスタを演出した。本庄一(埼玉)の応援団で埋め尽くされた一塁側のアルプス席でブラスバンドが奏でるのは、ラテンの国からやってきた留学生のために用意された軽快な「テキーラ」のリズム。 そんな周囲の陽気な雰囲気とは対照的に、バッターボックスに立つ奥田ペドロは、打席に人生を賭けていた。大会一回戦の開星(島根)戦は、4対4の同点のまま本庄一による九回裏の攻撃を残すのみとなっていた。