「今回語ったことの多くは、家族しか知らなかったことです」。2時間半にわたる取材の最後に、山本喜誉司(1892―1963、東京)の二男の坦カルロス(たん、88、北京生まれ)はそう付け加えた。ブラジル国家の背骨を作ったといわれるヴァルガス政権初期に起きた、伯国史最大の市民戦・護憲革命から数えて、この9日で80周年となる。笠戸丸から24年、1932年9月下旬、連邦軍と聖州軍は東山農場を挟んで対峙し、最後の激戦を繰り広げた。今年11月に創立85周年を迎える日系最古の企業の一つ、東山農場がブラジル史に残る貴重な歴史的舞台となった瞬間だった。その時の農場長・山本喜誉司は、戦後に聖市400周年や文協創立をはかり、日系社会統合をなしとげた。知られざるその家族史を聖市の自宅で坦に聞いた。