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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=23

04/07/2023

「おかあちゃん」
 家に駆け込んだが返事がない。部屋に母はいなかった。カンテラの灯りが、ぼうっと周辺を照らしていた。炊事場にもいない。さらに裏庭へ出て、井戸の辺りから裏山に通じる小径を探した。すると、小径の向こうからとぼとぼ歩いてくる人影があった。近づくとそれは母だった。櫛を入れない髪が頬を隠し、やせ細った手は力なく垂れている。律子はギョッとした。
「今、用便に行ってたんや。何回行っても血便が少し出るだけで、お尻が絞ったみたいに痛い」
 悲痛な声だった。とにかく見つかったことに律子はほっとした。
「アメーバって、三ヵ月もすれば治るそうや。もう少しの我慢や」
...

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