小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=89
祖国を愛した母は、遠隔の地で日本の敗戦を知った時、貧血を起こして何日も寝込んだという。私はブラジル生まれで、祖母とともに幼時を十年近く日本で暮らしたものの、日本への愛国心はさほど強くない。が、母を想う気持ちは、母の愛国心に劣らぬものだ。私を産み、育て、慈しんでくれた母が僅か四〇年の人生で、癌という病魔にとり憑かれてしまった。運命と諦めるには非業過ぎる。この事実を母に告げてはならないのだ。さりげなく母と対面し、安心して手術にもっていけるよう、説得しなくてはならない。しかし、自分にそれが旨くできるだろうか。
私は電車を降り、公衆電話に取りすがって仕事中の父を呼び...
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