小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=16
「律子、起きろよ」
父親の田倉の声がした。
「ああ、しんどいな」
律子は、声をかけるだけで自分から起きようとしない父親を恨みながら、寝床から半身を起こした。手探りで枕もとのマッチを取り、左手でカンテラのほやをはずし、それに点火する。赤い力のない灯りがぼおっと、辺りを照らした。三メートル四方の、これといった家財道具のない部屋は寒々と見え、天井のない屋根瓦までの空間が、うつろに広がっていた。
律子はほつれた髪の毛を後ろに撫で上げ、乱れた寝間着の前を合わせて立ち上がった。土間に下り、板壁に吊ってある仕事着と取り替える。律子の身体はぴちぴちとしていて、胸もと...
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