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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=39

12/08/2023

「この前な、町に出たときこれを見つけたんだ。正真正銘の菊正宗だ。一杯やるといい」
 岡野は田倉を抱えて座らせ、杯を差し出した。
「どうだ、おいしいだろう」
「ううん、久しぶりに、日本の味だな」
 一口、杯を傾けた田倉は、眼を閉じた。感無量という表情である。若い頃から酒になじみ、総ての友情は酒とともに培ってきた田倉だったし、交渉ごとにも酒は付き物だった。
寒い日など、障子のほの明りの中で、熱燗の酒を酌み交わしながら温める友情は、何とも言えぬものだ。だが、あの情緒はもう戻りそうにない。田倉は瞼の潤む感動に浸っていた。
「これでマラリアは撃退だ。ところで田倉さ...

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