《記者コラム》ブラジルにもスポンジシティ=リオ市が条例整備を開始

ブラジル南部では雪や霜、氷雨などといった言葉が聞かれる一方で、日本では最高気温40度などという信じ難い猛暑が続いている。リオ・グランデ・ド・スル(RS)州の大水害後も世界各地で大洪水が起き、カリブ海諸国や米国でのハリケーン被害の報道に接する度、地球温暖化や都市のヒートアイランド現象などの怖さを思い出す。
小学生時代、夏休みの課題で水草の観察を行った時の最高気温は31~33度だった。北半球の熱波や日本の最高気温の報道を聞く度、いま世界で何が起きているのかと考えてきた。これらの原因がヒートアイランド現象だと知ったのはいつのことだったろう。
ヒートアイランド現象は、都市の地面がアスファルトやコンクリートで固められ、水分蒸発による温度低下効果を失ったり、建物の密集化や高層化で風速が弱まって地表の熱が発散し難くなったりした上に、空調や車などによる排熱による気温上昇などが重なって起こる。
ヒートアイランド現象が起こると、気温が上昇し、不快感や熱中症などの健康被害拡大や生態系の変化などの影響が出る。ニュースなどが健康被害を避けるため、空調設備の使用を積極的に呼びかけると、排熱が加速され、さらなる気温上昇を招いてしまう。
アスファルトやコンクリートで地面を固めた町は雨水を吸い込まないため、少し強い雨が降ると洪水や川や湖の汚染を招く。地表が高温になるため、雷や夕立が起き易くなることは、RS州の大水害やサンパウロ市での洪水、雷の発生状況を見てもわかる。
そんな問題の解決方法として近年とみに関心を集めているのがスポンジシティ(海綿都市)だ。3月4日付wired.jpサイトなど(1)(2)によると、地表面に水を貯めることで洪水などを防ぎ、暑い時は土や植物からの水の蒸発が涼しさを生み出すなど、雨水管理と冷却を兼ねた優れものだ。
RS州の大水害は世界中にも知られる大災害となり、今後の街造りのあり方も注目されているが、そんな折、リオ市がスポンジシティ導入のため、条例を準備中との報が流れた。
4日付アジェンシア・ブラジルなど(3)(4)(5)によると、同市では「雨の庭(jardins de chuva)」と呼ばれる植物を植えた公園などを造り、地表面からの水の吸収を図ることで排水システムへの負担軽減や水質向上を図ると共に、雨水や地下水の再利用も考えており、従来の洪水対策よりも効果的と強調。地表や植物からの水分蒸発による気温低下効果も期待できる。

サンパウロ市の洪水対策のピシナン(大型貯水池)も、コンクリートで囲まず、ある程度の量の水が壁面や水底から吸収されるようにすれば、スポンジの役割を果たすようになるだろう。
自然が豊かだった頃は現在のような大水害や大干ばつは起き難かったが、人が手を加え過ぎ、破壊してきたことで、自然が共生するものであるよりも、人に爪や牙を向けるようになったというのは言い過ぎだろうか。
互いを生かし、互いに益をもたらすレベルの判別は困難かも知れないが、スポンジシティが、便利さや近代化を追求する内に忘れた、人間も自然の一部であるという事実を思い出させてくれるよう望みたい。(み)
(1)https://wired.jp/article/us-cities-could-be-capturing-billions-of-gallons-of-rain-a-day/