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《記者コラム》ベネズエラ選挙で「開票速報」がなかった違和感

2024年8月2日

開票速報が進まなかったCNNブラジルの映像(Reproducao)
開票速報が進まなかったCNNブラジルの映像(Reproducao)

 現在、国際的にベネズエラの大統領選が話題かつ問題となっている。コラム子はベネズエラ問題に関して前任大統領のチャベス氏の頃から見てきたし、マドゥーロ氏の起こしてきた問題も就任当初から11年にわたって見てきている。

 今回の大統領選に関しては、他国からの選挙監査団を拒否したあたりから選挙に透明性は期待できないだろうと思っていた。だが、今回の選挙で覚えた違和感はそこではなかった。思えばかなり前からベネズエラの選挙には選挙の「常識」が感じられず、違和感を抱いていた。そしてその違和感の正体が今回の選挙ではじめて体験的に理解できたのだ。
 違和感の正体、それはズバリ「開票速報」がなかったことだ。7月28日の夜、コラム子はパソコンのブラウザ画面をG1サイトのベネズエラ選挙速報ページに固定して午後8時からずっと見ていた。だが、これが一向に動かない。雑事をしながらも基本はサイトに動きが無いかを見ていたのだが、午後10時頃には流石に痺れを切らして見るのを一旦止めた。「揉め事でも起きていて、決まるのは数日後かもしれないな」と思ったからだ。
 ベネズエラの中央選挙委員会(CNE)が途中速報もないまま突然マドゥーロ氏の勝利宣言をしたのはそれから2〜3時間後のことだった。
 コラム子の人生において、生放送による途中経過を知らせない選挙結果発表を認識したのはこれが生まれて初めてのことだった。
 コラム子が選挙の存在を意識し始めたのは70年代末ころで、80年代前半には選挙開票速報がテレビで流れていたのを見た覚えがある。90年代になる頃には夜通しで放送するようになっていた。2000年代のネット時代になる頃には、自国の選挙はもちろんのこと、他国の気になる選挙もニュースサイトの開票速報でリアルタイムで票の動きが確認できるようになった。そんな時代になって少なくとも20年近く。今回のベネズエラのような開票方法はありえないのだ。
 それに加えて、今回の選挙は国際的にも固唾を飲んで見守っていた人が世界に何万人といた。それだけに、この違和感こそが世の人々に「この選挙は不正」と思わせる最大の要因になったように思う。
 CNEもマドゥーロ氏も「当選の証拠はある」と主張しているため、現時点ではまだ不正であるとは断定はできない。だが、CNEが行ったやり方は、国際的に常識化した開票のプロセスを無視したものであったのは間違いない。普段何気なく見ていた開票速報の途中経過に、かくも選挙の透明性を高める効果があるのかと思い知らされた。(陽)


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