《記者コラム》新しい日常の恐ろしさ=線状降水帯に海面上昇

ブラジルは今、冬とは思えない高温とサハラ砂漠並みの異常乾燥の中にあり、火災多発、健康被害などの言葉が飛び交っている。近年は冬に真夏並みの高温を経験することが多くなっているが、同様のことは世界各地でも起きている。日本での台風発生早期化や被害の甚大化もその一例で、これらの現状を「新しい日常」という人も出ている。
新しい日常は、新しい言葉との出会いにも表れる。コラム子にとっては、数年前から頻繁に使われるようになった「線状降水帯」がその一例だ。この言葉を聞くと自動的に、豪雨や土砂災害発生、またはその可能性が高いのだと考えるようになったのはいつからだったろう。先日は、線状降水帯の向きと川の向きが重なると急な川の増水や土砂災害も起き易いとの解説もあった。
ブラジルではエルニーニョ現象や海水温上昇に伴う少雨干ばつに異常乾燥、それによる火災多発などが新しい日常になっている。8月28日にはアマゾン地域が文字通り「燃えている」ことを示す衛星写真が発表された(8月28日付メトロポレス(1)参照)し、アマゾナス州が州としても緊急事態を宣言したこと、各地で続く大規模火災などの報道も後を絶たない。
8月27日に出た海水温や海面上昇関連の報道も、背中に冷水を浴びせられたような感覚を味わった報道の一つだ。米国航空宇宙局(NASA)は何年も前から気温上昇や海面上昇について研究しており、太平洋の一部では過去30年間に海水面が15センチ上昇した所があることなどを、国連が発表したのだ(8月27日付G1サイト(2)参照)。
また、その前日に国連が出した別の文書には、リオ州2都市の海面が2050年までに最大で21センチ上昇する可能性などを示す、NASAが2020年に行った推計も掲載されていたという。
この文書は、海面上昇の現状と将来の予測についてをまとめたもので、今世紀末までの気温が3度上がると想定した場合、モルディブやツバル、マーシャル諸島などは消滅することや、米国ニューオリンズでは2050年までに海面が最大で46センチ、リオ州のサンジョアン・ダ・バラ市アタフォナ区やリオ市の海面は同年までに12~21センチ上昇する可能性があることなどが記されている(8月27日付G1サイト(3)参照)。
ブラジルのメディアはこの発表後、浸食作用で崩れたリオ市海岸部の道路などを報じたが、これらの新しい日常は食い止めることや元の状態に戻すことが難しい。
エルニーニョ現象の頻発化や少雨干ばつはブラジルの人達の日常と化したが、これでもまだ気候変動や地球温暖化を否定するとしたら、それは否定主義以外の何ものでもない。気候変動は子供や孫の世代の問題とうそぶいていた人達も、現実に何が起きているかを知り、認めると共に、それに真摯に向き合い、最悪の事態を避けるよう努めることが必要な事態になっている。(み)
(1)https://www.metropoles.com/brasil/mancha-de-fogo-com-500-km-de-extensao-toma-a-amazonia 8月28日
(3)https://g1.globo.com/meio-ambiente/noticia/2024/08/27/mar-pode-21-cm-cidades-do-rj-ate-2050.ghtml