《記者コラム》レバノンへの空軍機出立=イラン参加で予定早まる

2日付弊紙1面でレバノン在留のブラジル人救出に空軍機を派遣することが決まり、週末に空軍機が出発する予定と報じた(1)が、記事を書いた1日の時点で派遣の前倒しが決まり、2日朝、空軍機は既にリオを出立と報じられた。
これらは皆、イスラエル軍の陸路でのレバノン侵攻やイランによるイスラエル空爆などで状況が急速に悪化し、救出を急ぐ必要が生じたことを示している。
関連記事を時系列順に見てみると、空軍機派遣の前倒しは1日午後2時半頃から報じられ始めていた(1日付G1サイトなど(2)(3)参照)。そこでは、第1陣に使うのはKC―30型機で、往路と復路にリスボンで給油を行うこと、220人を救出する予定であること、派遣日程は未定だが、数日中に後続機も派遣されることなどが記されている。
レバノンは在留ブラジル人が約2万1千人と中東一多く、先週の空爆ではブラジル国籍の15歳の少年と16歳の少女が死亡する事態も起きた。
ブラジル人救出はその前から協議されていたが、9月30日に救出作戦を実行することが決まった途端、急ピッチで事が進んでいる。
一方、15歳少年の家族は速やかに伯国に到着したが、16歳少女の家族は、唯一のブラジル国籍者だった少女が死亡したため、彼女の母親や兄弟は旅行者としてのビザをとってブラジルに来た後、難民申請をしなければならない(1日付G1サイトなど(4)(5)参照)など、在留ブラジル人や各自を取り巻く状況は様々だ。
ただ、レバノンを巡る現状はますます悪化し、命の危険が増していることは明白だ。そのことは、現地で活動するブラジル人のジャーナリストがレバノン人の母親を看なければならない夫を置き、単独で帰国しなければならないと語ったりしていることからもうかがわれる(2日付G1サイト(6)参照)。
イスラエル軍による空爆激化直後も、帰国するための航空券を入手することが困難で、ブラジル政府の援助が必要と訴える人達の記事も出ていた(9月26日付G1サイト(7)参照)。
1日夜のニュースでは、イランによるイスラエル空爆が行われ、迎撃ミサイルで大半は撃ち落としたが、イスラエル国内に到達したロケット弾もあり、ガザ地区住民が歓声を上げている様子も報じられた。国連は即座に会合を開いて対応を協議したが、事務総長が「イスラエルは他国の尊厳を尊重すべき」と述べると、イスラエルは事務総長を「ペルソナ・ノン・グラト(受け入れ難い人物)」として、自国への入国拒否をするなど批判的姿勢をとり、交渉難航は明らかだ(2日付G1サイトなど(8)(9)参照)。
ブラジル政府が対応を前倒しする判断は正しいと思うが、救出作戦は世界中で高まる全面戦争への懸念を払しょくしたり、鎮静化することにはつながらない。
中東での全面戦争という筋書きはハルマゲドン(世界最終戦争)の口火ともなりかねず、何としても食い止めなければならないと考えている人は多いはず。各自が上げる声や祈りは小さく、為政者の心を動かすことは困難かも知れないが、後続の救出機派遣も含めた救命活動前進と共に、全面戦争回避のための交渉進展を祈らされる日々が続いている。(み)