小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=58
「俺には家庭はないんだ。いまの所は仮の住家でしかない。新しい人生を出発するためには君の助力が欲しいんだ……俺と一緒に逃げてくれないか。ブラジルは広い。どこへ行っても、二人の生活くらいは保証できる。新しい生活に踏み出すのが俺の青春なんだ」
「言っていること、よく解るわ」
律子は立ちあがった。乱れた髪の毛をととのえ、衣服の汚れを気にしてしきりに振った。
「もう一度くり返すが、俺と逃げて欲しい。せっぱ詰まっているんだ」
「貴方のお気持、私なりに理解もでき、同情もします。でも、今すぐ、一緒に行動はできないのよ。解ってほしいの」
「そうか……よし、解ったよ」
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