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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=15

2023年6月20日

「偉そうなこと抜かすな。兄貴は親の財産を守ってりゃいい顔やが、俺はお前からもらった猫の額ほどの土地を耕して何ができるんや」
「食べられなけりゃ、酒を止めて真面目に働け」
「お前に俺の気持ち解るものか。あんな勝気な女をあてがいやがって、俺の人生はめちゃめちゃだ。酒を飲まずにいられるか」
「あの女を嫁にしたのは母親だ。お前に丁度いい女ではないか。不服ならその仏壇に焼香でもして母親に毒づけ。気持ちが落ち着くやろ」
 口論は平行する。殴り合いにならなかったのは、兄の腕力がずば抜けていたからであろう。
 戸外で喧嘩を避けていた律子が家に帰ると、茶碗の破片やら電灯の傘...
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