小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=41
「これで安心だ。はらはらさせられたが、先ずは、難関を突破できた。わしのコーヒー園で働いてもらってもいいと思ったが、あまりにも耕地に近すぎる。少し距離はあるが添島植民地にお願いしたんだよ。あそこはこの地方きっての高台で、健康地と言われているから、田倉さんの病気はすぐ治るよ。パトロンは日本人で、いい男だ。皆頑張るんだぜ。わしはここで失礼するが、太郎が行くから心配は要らん。では、皆、元気でな」
岡野は夜逃げの一行を誘導しているという卑屈さなど微塵もなく、ごく明るく振舞った。力強く手を上げて振った。
周囲一帯はコーヒー園であった。星明りが、一メートル高の幼樹の...
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