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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=109

2024年3月20日

「田島さん、まだですの? ここで待つように言われたんですけど」
「僕もそうなんです。しかし千江子さんを招待するとは言わなかった。あいつ意地が悪いな」
「びっくりさせてやろうと思って……」
 笑ってもあまり大きくならない口をまたほころばせた。
「京都っていいところですね。今ここに立っていると、そこの真鍮の筒の中から舞妓さんがひょいひょいと顔を出した。戸惑っていると千江子さんが現われて、日本の女性に和服は伝統的な美を感じますね。ことに背景が京都と相俟って。僕は何だか夢の中を泳いでいるような、映画の一コマを演じているような妙な心地です」
「初めておいでたからそう...

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