ブラジル政府=中国スペースセイルと契約締結=スターリンクの優位性抑制へ

ブラジル通信省は19日、中国民間企業スペースセイル、および中国国家データ局と契約を締結したと19日付G1サイトなど(1)(2)が報じた。
スペースセイルは地球低軌道(LEO)衛星を使用した高速インターネットサービスを開発しており、中国国家データ局は、スマートシティ構想を支援し、デジタルインフラを開発している。
スペースセイルはイーロン・マスク氏がCEO(最高経営責任者)を務めるスペースXが展開するスターリンクの競合企業であり、マスク氏とブラジル当局との間で緊張が高まる中、この計画により、スターリンクがブラジルで行っている衛星インターネットサービスに対する支配力を弱めるのに役立つとみられている。
LEO衛星は小型で、地球の周囲に本物の「星座」を形成している。従来の衛星が1千km近く離れているのに対し、LEO衛星は地表から約549kmの距離にある。地表との距離が近いため、データ伝送時間は短くなり、より高速で信頼性の高いインターネット接続が可能になるという。
そのため、同社の技術は通信インフラが整備されていない地域への接続手段として有望視されており、ブラジル国営通信会社(テレブラス)はスペースセイルに対してデータセンターや光ファイバーなどのインフラを提供し、協力体制を構築する意向を示している。
ジュセリーノ・フィーリョ通信相は同日行われた記者会見で、「我々は、中国側がブラジルの全ての法律と規制規則を遵守し、正当な法的手続きを経て通信事業認可を受けることを条件に、できるだけ早くこのサービスを提供できるよう進めている」と述べた。
スペースセイルがブラジルで事業を行うためには、全国法人登録台帳(CNPJ)に正式登録し、同サービス提供の認可を担当する国家電気通信庁(Anatel)に必要書類を提出する必要がある。
同相によれば、スペースセイルは現在40基の衛星を軌道に乗せている上、向こう14カ月間で648基を打ち上げる予定であり、これらの衛星が宇宙に到達した時点で、ブラジルでのサービス提供を開始することができるようになるという。さらに、2030年までに1万5千基の衛星を軌道に投入する計画がある。
この契約は、ジュセリーノ・フィーリョ通信相が10月、商業的および技術的な機会を開拓し、ブラジルへの投資を促進するために中国を訪問してから約2カ月後に結ばれた。同相はその際、自身のSNSで「スペースセイルが〝間もなく〟ブラジルでサービスを提供を開始する」と言及していた。
だが、同社が同国で事業を開始するまでの期限は正式には発表されていない。中国大使館は、この報道に関する問い合わせには回答しなかった。
スペースセイルが提供する技術はイーロン・マスク氏のスターリンクと類似している。スターリンクは、ブラジル当局との間で摩擦を抱えつつも、衛星経由の高速インターネットを提供し、遠隔地への接続を実現している。スターリンクは、ブラジルでの運営についてAnatelから承認を受けており、国内での衛星インターネット市場の45・9%を握っている。
マスク氏は2022年にブラジルを訪れ、当時の大統領のジャイール・ボルソナロ氏と同通信相のファビオ・ファリア氏と面会した際、スターリンクを通じて農村地域の学校1万9千校にインターネットを接続する計画を発表した。また、アマゾン地域の監視にもスターリンクを活用することを約束したが、正式な契約は結ばれなかった。