site.title

国連報告でラ米企業4社非難=「ガザのジェノサイドで利益」

2025年7月16日

ガザ地区における軍事紛争の開始以来、ルーラ大統領はイスラエル政府を強く批判してきた(Foto: Fernando Frazão/Agência Brasil)

 国連の特別報告者で、パレスチナ自治区の人権を担当するフランチェスカ・アルバネーゼ氏は、イスラエルによるガザ地区での「ジェノサイド」により利益を得ているとして、ブラジル石油公社ペトロブラス(PB)やメキシコのオルビアなど、ラ米に拠点を置く企業4社を名指しで非難した。同氏が国連人権理事会に提出した報告書は、これらの企業がイスラエルの軍事行動を実質的に支え、占領地での資源搾取や軍事インフラ整備に加担していると指摘。国際社会に対し、企業への監視と責任追及を求めていると13日付BBCブラジル(1)が報じた。

 報告書は「占領の経済からジェノサイドの経済へ」と題され、イスラエルによる攻撃が続く中、多国籍企業が人道危機から利益を得る構造を浮き彫りにした。「ジェノサイドが継続するのは、それが多くの人々にとって利益になるためだ」とも指摘している。

 世界各国の企業が名指しされる中にラ米4社が含まれた。ブラジルPB、メキシコのオルビア、コロンビアからイスラエルに石炭を輸出している多国籍企業グレンコア(本社スイス)とドラムモンド(本社米国)だ。

 報告書では、PBが大きな権益を持つブラジル油田から採掘された原油が、イスラエルで軍用燃料として使用された可能性に言及。これに対し同社はBBCの取材に「報告期間中、イスラエルの顧客に原油も重油も販売していない」とし、同社が供給元とされる根拠はないと否定。「国連のグローバル・コンパクトおよび『ビジネスと人権に関する指導原則』を含む国際法と規範を順守し、人権を尊重・推進している」と強調した。

 一方、オルビアは子会社ネタフィムを通じて、占領下の西岸地区で灌漑技術を提供。イスラエルの農業拡張と水資源の利用を支援しているとされる。報告書は、ネタフィムの技術が「拡張主義的ニーズ」に沿って設計され、パレスチナ人の土地と水を奪っていると批判。現地農家は水を失い、生産競争から排除されていると指摘した。

 コロンビア政府は24年6月に対イスラエル石炭輸出の停止を発表したが、報告書によればグレンコアとドラムモンドはその後も輸出を継続。グレンコアは報告の内容を否定し、ドラムモンドは「法的拘束力のある契約に基づく例外措置がコロンビア政府に認められた」と説明した。

 報告書は「燃料供給を通じて企業はイスラエルの軍・民インフラを支え、占領の恒久化とパレスチナ人の生活破壊に寄与している」と批判。表向きに民間用途であっても、企業は責任を免れないと指摘した。

 イスラエル政府はジェノサイドの疑惑を強く否定し、報告書を「根拠なき文書」「歴史のごみ箱に葬られるべきだ」と一蹴した。

 報告書はまた、各国政府に対してイスラエルへの制裁を求めたが、それに対する対応として、米政府は9日、報告書を作成したアルバネーゼ氏に対し逆に制裁を科すと発表した。国務省は同氏を「反ユダヤ主義的かつ反イスラエル的に偏向している」と批判。これに先立って同氏の辞任を求める外交的な圧力があったが実現せず、今回の措置はその延長線上にあるとみられている。

 こうした米政府の対応に対し、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのアニエス・カラマール事務総長は「露骨な攻撃」だと非難。特別報告者は人気取りのためではなく、人権と国際法を守るために任命されていると反論した。

 他方、開戦以降、ルーラ大統領はイスラエルを繰り返し非難し、駐イスラエル大使を召還する措置も取っている。しかし同報告書によれば、石油輸出の停止には踏み切っておらず、PBの関与が結果としてイスラエル軍の燃料供給に寄与している可能性があると警告されている。


漁網に絡まったクジラ救出=善意の介入も当局が違反調査前の記事 漁網に絡まったクジラ救出=善意の介入も当局が違反調査
Loading...