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ブラジル マンダカルー物語=黒木千阿子=(27)

2025年8月12日

 さあ、ちいちゃん、ふうちゃんの次にはまあちゃんの登場です。

 おまわりさんのセニョール・コレイアが、町で交通整理をしていた時でした。

 自分が飼っている、娘ロバのまあちゃんとお母さんロバが、パカパカと嬉しそうにやってきましたので、ピーピーと笛を吹いて家に帰れと合図しました。

 しかし、全然効き目がありません。相変わらず二頭が交差点ではしゃぎまわっている間、信号は青になったり赤になったり。

 セニョールコレイアは、笛をくわえたまま、全くのお手上げの体で思案投げ首。とうとう家畜捕獲人がやってきました。

 こういう場合は、お巡りさんとて捕獲人にはかないません。

セニョールコレイアは、自分のロバが二頭とも捕まっては元も子もありませんから、お母さんロバが捕獲人に追いかけられている間に、まあちゃんのお尻を力いっぱいに叩いて逃がしました。

 お母さんロバは、結局捕まってしまいましたが、セニョール・コレイアは

もう、お母さんロバをもらい受けには行きませんでした。

 何故かというと、毎回同じことの繰り返しで、その度に罰金を払うことにうんざりしていたからです。

 こうして、お母さんを失ったまあちゃんは、しょんぼり帰って行ったのですが、この時、偶然あの誇り高きふうちゃんに出会い、行動を共にするようになりました。

 ふうちゃんは、ジャポネーザと同様、自由と独立を愛するロバでしたから、ジプシーになって、あちこち好き勝手に生きることを望んで、縄に繋がれるのをいやがりました。

 でも有難いことに仲良しのロバ達が夜になるとやってきて、大きな歯でふうちゃんの自由を奪っている縄目を噛み続けてくれますので、ジョン爺さんが起きだす朝には縄の結び目はほどけて、ふうちゃんは仲間と一緒にどこかで自由を謳歌しているわけです。

 逃げ出したふうちゃんを探しに行くのは、息子のジランの役目でしたが、一人前の若者になっても、暇さえあれば太鼓を叩いて歌ったり、踊ったりの毎日で、ふうちゃんの世話など全くしなくなっていました。

 このことが逆にふうちゃんにはとっては幸いして、ジプシーよろしく仲間と自由に遊びまわることができたのです。

 けれども、ふうちゃんを先頭にロバ達は時々町中を我が物顔で闊歩したものですから、当局から睨まれるはめになりました。

 遂に、自由ロバ捕獲のために交通局のトラックが道路で待ち受けることになりました。

さあ、たいへんです。ふうちゃん、まあちゃんたちの自由を愛するロバたちが、威風堂々と姿を現しました。

 すぐさま捕獲人たちは、ロバたちを取り囲んで縄を投げ始めました。すると、ロバ達もさるもので、投げ縄攻撃に直ちに反撃です。


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