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ブラジル マンダカルー物語=黒木千阿子=(34)

2025年8月22日

 これから成長していくカイオを世間の口から守るためにも、私達はまた、昔の仲良しに戻りました。

 それは、私が生きているうちにしておかねばならない義務でした。

 小さな自転車をこぎながら、

 「テレジーニャ、テレジーニャ」

 とやって来るカイオを迎える時の私は、もうすっかり地の通ったおばあさん気分です。

 ようやく辿り着いた我が心のふるさと。

 それが、マンダカルーの里でした。

 ボンゴ、ボンゴとどこからともなく太鼓の音が聞こえて来る夕暮れ時など、さながらアフリカの村里に暮らしているようです。

 日本に対するとんでもない偏見を持っていたあのお年寄り達は、今目を細めてジャポネーザには自分達と同じ血が流れていると言って、とてもかわいがってくれます。

 そんな彼等と一緒になって、母なるアフリカへの郷愁に浸りながら、その海の向こうのはるかな国日本。

 そこに住む、やさしく美しい人々を懐かしく思い浮かべる今日この頃です。

(終)


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