ブラジル マンダカルー物語=黒木千阿子=(34)
これから成長していくカイオを世間の口から守るためにも、私達はまた、昔の仲良しに戻りました。
それは、私が生きているうちにしておかねばならない義務でした。
小さな自転車をこぎながら、
「テレジーニャ、テレジーニャ」
とやって来るカイオを迎える時の私は、もうすっかり地の通ったおばあさん気分です。
ようやく辿り着いた我が心のふるさと。
それが、マンダカルーの里でした。
ボンゴ、ボンゴとどこからともなく太鼓の音が聞こえて来る夕暮れ時など、さながらアフリカの村里に暮らしているようです。
日本に対するとんでもない偏見を持っていたあのお年寄り達は、今目を細めてジャポネーザには自分達と同じ血が流れていると言って、とてもかわいがってくれます。
そんな彼等と一緒になって、母なるアフリカへの郷愁に浸りながら、その海の向こうのはるかな国日本。
そこに住む、やさしく美しい人々を懐かしく思い浮かべる今日この頃です。
(終)