《記者コラム》襲撃者に「ラヴァ・ジャットの精神」?

16日付フォーリャ紙サイトに興味深い記事が掲載されていた。8日に起きた三権中枢施設襲撃事件には「ラヴァ・ジャット(LJ)作戦の精神」が影響しているというのだ。
記事では、オクラホマ大学でブラジル研究を専門とするファビオ・デ・サー・エ・シウヴァ氏が三権中枢施設襲撃事件を分析。シウヴァ氏によれば、事件発生にはいくつかのLJ作戦の影響が見られるという。
その内の一つは、権力への不信をセンセーショナルな形で世間に訴えることの有効性をLJ作戦の主要人物たちが示し、それを受け継いだというものだ。
LJ作戦の検察主任だったデルタン・ダラグノル氏は、提出した要望や被告の処遇に関して、自分の意に望まない判断を最高裁に下された際、ネット上で「フォーラSTF(やめろ最高裁)」と号し、支持者を煽った。
担当判事だったセルジオ・モロ氏は2016年3月に、ジウマ大統領(当時)とルーラ氏の会話を違法に盗聴し、部分的な会話を報道させ、あたかも「判事による事件スクープ」のようにして世間の注目と支持を集めた。
この指摘を読み、たしかにデルタン氏やモロ氏の行動を社会が是認する様子を見ていれば、襲撃者らが今回のテロ行為を「英雄的行為」などと思い込むこともあるだろうと思った。
ただ、8日に起こったテロ行為は、国民の93%が否定し、それ以前に行われていた選挙結果に対する抗議行動も75%が拒否していた。今回のボルソナロ派の行動は支持を受けていない。
これは「LJの精神」が国民に支持されていないということでもある。「LJの精神」が国民に忌避されるようになったのは、LJ自身のせいだ。デルタン、モロ両氏の会話記録で明らかになった司法と検察の癒着、公的組織の捜査であるのに「ファンドを作ろう」などと提案したデルタン氏の言動。捜査班の望む結果が出るまで引き延ばし行われた汚職企業関係者の褒賞付証言。これらの行いが「LJの精神」にあったはずの「正義」を揺らがせてしまった。
シウヴァ氏は、有罪だったルーラ氏の実刑を解き、被選挙権を回復させたことで、LJ作戦は結果的に最高裁に対する新たな疑念を生んだとも指摘している。
モロ氏は図らずも、8日の襲撃事件発生直前に「抗議者を取り締まるなんて」と襲撃者たちを擁護。デルタン氏も事件後に「これは大きな間違いだ。これでは政権を強めるだけだ」と発言した。両氏の言動には、民主主義尊重の精神や、暴力への怒りは反映されていなかった。(陽)