小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=7
車内での昼食はパンにハムを挟んだものが配られた。パンは長く巨大で、ハムは外まではみ出しているため頬ばりにくい。ちぎって口に運ぶのだが、まるで鯉の餌の麩みたいで味がない。ハムは生肉を塩で固めた代物だし、日本でそういうものを食べてない移民たちは、その異物を持て余し溜息をもらした。妙な物を手にした猿のように小首をかしげたり、列車の窓から投げ捨てる始末だった。
実は、昨夜のホテルでの夕食もほとんどの移民が食べ残していた。黄色く太いうどんにトマト汁、それに粉末チーズを振りかけて食べるマカロニは、脂の臭いが強くて食欲が湧かなかった。
ことに、永い船酔いと育児に疲労衰弱...
有料会員限定コンテンツ
この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。
認証情報を確認中...
有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。
PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。