EU=委員長「年内FTA発効へ」=高まる域間貿易振興への期待

ルーラ大統領が12日、欧州連合(EU)委員会のウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン委員長と会談を行ったと同日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
ルーラ政権はEUとの関係回復を優先課題の一つとしており、ライエン委員長の来訪は2月17日からの話し合いで決まった。
両者の関心事は、森林伐採削減を含む気候変動対策やブラジル/EU間の経済協力、再産業化などだ。ルーラ氏は「先進国によって途上国の再産業化に巨額の支援プロジェクトが組まれてきた。だがブラジルは深刻な産業空洞化に苦しんでおり、公共事業などの財政投資による産業育成を進める意向だ。研究や知識、イノベーションなどの能力統合は雇用創出や富分配につながる」と述べた。
また、情報技術やデジタル空間の規制、5G、半導体などへの取り組みや、ウクライナとロシアの間の和平合意に向けた交渉進展も議題となった。ライエン氏は戦争の影響はウクライナ国境を越えており、欧州も永続的で公正な平和を望んでいると述べている。
気候変動対策関連ではアマゾン基金への2千万ユーロ(約1億レアル)の資金拠出の申し出があった。同基金は15年前創設され、ノルウェーやドイツからの資金を軸に法定アマゾンでの森林伐採削減や生態系保護などの活動支援を行っていたが、2019年からは機能が停止していた。
だが、2022年11月に最高裁が60日以内の資金開放を命じたため、現政権では法定アマゾンでの活動支援を再開。昨年末にはノルウェーとドイツが凍結資金を解除し、今年は米国や英国が支援を申し出るなど、森林や生態系保護への動きが活性化している。
EUはその他にも4億ユーロを法定アマゾンでの不法伐採撲滅と土地適正化に、20億ユーロをグリーン水素生産に投じる意向だ。EU側は、EU参加国や民間資本により、100億ユーロをラ米とカリブ海地域への投資とする意向だという。
ルーラ氏は、EUはブラジルにとり世界第2の貿易相手国で、今年の総貿易量は1千億ドルを超える見込みであることや、EUにとりブラジルはラ米一の生産投資対象国であるとし、貿易協力の必要性を強調。メルコスル/EU間の自由貿易協定(FTA)の締結が遅れているとの不満も漏らしたが、ライエン氏は全国工業連合との会合後の会見で、経済域間の貿易協定は年内にも成立するとの見通しを明らかにした。