アマゾン=先住民族大集会を取材=ジャーナリストの下郷さん

千葉県在住の日本人ジャーナリスト・下郷さとみさん(61歳、石川県出身)が、去る7月18日から8月7日まで来伯し、サンパウロ市から約2000㎞離れたマット・グロッソ州北部にあるカヤポ民族のピアラス村(カポトジャリーナ先住民族保護区内)で開催された全国先住民族の大集会を取材した。

大集会には、カヤポ民族の長老ラオニ・メトゥティレ氏(91歳)の呼びかけで全伯から54民族、1000人におよぶ先住民族が集結。先住民族の土地への権利を著しく阻害し、森林乱開発を招きかねない法案の阻止などの火急の問題に対する抵抗運動を強化し、内外の世論に訴えること、また高齢のラオニ氏の後に続く若い世代に運動を継承することが集会の目的だった。
下郷さんによると、アマゾンの先住民族保護区では金の違法採掘や木材の盗伐、勝手に森を焼き払って農牧場を不法に設置するなどの問題が深刻だ。セラードでは輸出用大豆などの大規模農業開発のために先祖伝来の土地を追われ、農場主や軍警から迫害を受けながら土地への権利を訴え続けている民族もいるという。
下郷さんとカヤポ民族およびラオニ氏との付き合いは、2007年と14年に日本のNGO(非政府組織)がラオニ氏を招聘した際に通訳者として同行したことに始まった。その後、15年から今年6月まで同NGOに協力し、カヤポ民族の消防団プロジェクト支援などに携わってきた。今回の取材はカヤポ民族の長老たちから、「先住民とアマゾンの森の危機に抵抗するために国際世論を高めたい。日本での報道に協力してほしい」と依頼されて決めたそうだ。
下郷さんのピアラス村訪問は6回目。今回、サンパウロ市からブラジリアを経由してマット・グロッソ州シノッピ市まで飛行機で飛び、同地から2本の長距離バスを乗り継いで同村まで「0泊2日」でたどり着いた。

大集会の取材で下郷さんは「『我々先住民族が森を守り、気候変動から地球を守っている』と彼らは語っていました。集会の運営は若者たちが取り仕切っていて、運動がしっかりと次世代に継承されているのを実感しました」と印象を語っている。
なお、下郷さんは昨年12月に出版された共著『ブラジルの社会思想~人間性と共生の知を求めて』(現代企画室)の第13章で「ラオニ・メトゥティレ」の執筆を担当。権利を求めるラオニ氏の長い闘いの軌跡を追うとともに、先住民族の精神世界について文化人類学的な考察を行った。