小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=88
「切開して見なければ解らない。ただの潰瘍かもしれない。でも、一日も早く手術をしなくてはならないことは言えます。放置すれば悪化する一方です」
私は、母があまりにも衰弱しているので、手術に耐えられないような気がする。暫く強壮剤でも投与してからでは、と尋ねてみた。しかし医師は、もはや強壮剤の効く身体ではない、母親を励まして一日も早く手術させることだ、まだ若いし、輸血もできるから心配はない、と言った。
医師は次の患者を気にしはじめ、私の居座りに迷惑そうな様子を見せたが、私は医師を離れてなすべき手段を知らなかった。
「お母さんは、手術をしなければ良くなる見込みはな...
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