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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=95

2024年2月24日

 次の日十時頃、看護婦がきて、手慣れた残酷な動作で母の鼻腔から胃に通ずる管を入れ、鎮静剤注射を打った。母は管のために話せない口を動かして意識の朦朧としたことを告げたが、間もなく寝台車ごとエレベータに乗せられ、手術室に運ばれて行った。
 伯父は母に向かって、しっかりするんだぞと産婦を励ますように声をかけた。母は頷いて、私と父の顔を見た。私たちはもう母を励ます言葉をなくしていた。
 何分か過ぎ、我に還った父は手術の様子を知りたい、立ち会わせてくれと頼んだ。しかし、医師は、それは禁じられている、暫らく辛抱するようにと言った。
 
(五)
 
 手術は順調に終え...
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