小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=99
(七)
父は絵画・彫刻や、建築などに興味をもち、その方面に関する書物も文芸物や哲学書と同じ比率で書棚を飾っていた。その分野においても古今の著名人の名をかなり正確に記憶しており、高校生の私などの比ではない。
父が建築に取り掛かった土地はまだ売買契約が済んでいず、従って正式な建築許可が取れなく建築技師も引き受けてくれない。父はそれをいいことに自分自身の意匠をめぐらした。土地幅が狭い、表に店を構えているので、見てくれと見晴らしのいい造りにならぬ、予算も少ない、と言いながらも、自分なりの構想を練った。二階を客間にし、四面ガラス張りの見晴らしのいいものとし、階下...
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