小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=108

「家内はよく働いてくれるが、わしの存在など無視されっぱなしだ。金にならない絵を描いて月給の半分以上費やしてなどと思っているんだよ。わしがこのアトリエを建てると言った時、親戚中が集まって反対したものだ。わしはこれだけは離縁しても建てたいと頑張った」
「どこの誰にも生きる苦しみはあるんだな、それで、彼女とはどうなの」
「事情があって里帰りしているんだ。今は中津と性が変わっているが相変わらず美しいよ。もやもやとしたこともあったが、教職にある者は淫らな風評をたてられるとおしまいだからな。絵を描くことだって趣味としては許されているが、個展なんか開けないんだ」
そう...
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