NYタイムス=前大統領がハンガリー大使館2泊=「逮捕逃れで亡命準備」疑惑=「国際情勢を議論」と反論も

ボルソナロ前大統領が今年2月のカーニバル期間中、自身のパスポートが没収された4日後に首都の駐ブラジル・ハンガリー大使館内に2日間に滞在していたことが米国ニューヨーク・タイムスの報道で25日に明らかになった。逮捕逃れで亡命準備かと推測されている。同日付G1サイト(1)(4)やCNNブラジル(2)(3)などが報じている。
ニューヨーク・タイムスによると、ボルソナロ氏がハンガリー大使館に身を寄せたのは2月12日のことだった。前大統領はこの4日前の2月8日に連邦警察の「テンプス・ヴェリタティス作戦」により、パスポートを没収されていた。連警の捜査は大統領選の結果を覆すクーデター行為に対するもので、前大統領側近のフィリペ・マルチンス容疑者が逮捕されるなど、緊張感の高まった日だった。
ボルソナロ氏は2月12日、車で在ブラジル・ハンガリー大使館に向かい、ミクロス・ハルマイ大使と会った。ボルソナロ氏は翌13日も大使館内で携帯電話で話をしているところを目撃されており、14日に同大使館を後にした。大使館入りする姿やハルマイ大使と対話を交わす様子は監視カメラの記録にも残っており、テレビのニュースでも報じられた。
この報道を受け、ボルソナロ氏の弁護側は同日中に声明を出し、同氏がハンガリー大使館で2日間を過ごしたことを認めた。弁護団は、ボルソナロ氏とハンガリーのヴィクトル・オルバン首相との関係は極めて良好なものであるとし、その滞在の目的が「ハンガリーの様々な機関と同国の政治的な状況についての会話」であったとした。オルバン首相は欧州でも有名な極右政治家の一人で、専制的な政治手腕でも知られている。
ボルソナロ氏自身は25日夜、サンパウロ市の市立劇場で行われたミシェレ夫人を顕彰するイベントに出席。その際、報道陣に囲まれたが、「大使館で寝泊りすることが犯罪行為にあたるのか」と反論を行なっている。同時に25日付CBNラジオによれば、前大統領の弁護士は「我々が提供する情報を超えた解釈は〝明らかな空想〟に過ぎず、事実とは無関係の〝フェイクニュース〟に当たる」と批判している。
だが、ジャーナリストや司法関係者たちの見方は厳しく、大統領経験者が「カーニバル期間中に他国大使館に泊まり込んで国際情勢を話し合う」という異常さに首をかしげている。弁護士のペドロ・セラーノ氏やジャーナリストのレイナルド・アゼヴェド氏など、多くの専門家がボルソナロ氏がとった行為は刑法312条の「一時拘束は、刑の適用に対し都合の良い身の保護を行った行為に対して適用できる」との項目に該当するとみなしている。
連邦議員たちの中でも既に、ルシエン・カヴァルカンテ下議(社会主義自由党・PSOL)のように、最高裁や連邦検察庁に対して、ボルソナロ氏の逮捕を求める動きが起きている。
最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は25日夜、ボルソナロ氏に対して、2日間にわたってハンガリー大使館に滞在した理由を48時間以内に説明するよう命じた。
メトロポレスは、モラエス判事が2021年8月、同年2月に逮捕された後、自宅軟禁となっていたダニエル・シルヴェイラ下議(当時)を再逮捕した際、「他国へ亡命するための動きが見られた」ことを理由に刑法312条を適用したことを指摘している。