温室効果ガス削減への道遠く=地方政府に可能な取り組みも

【既報関連】例年にない少雨干ばつで火災件数も急増する中で地方選が行われているが、火災急増で大量排出されている温室効果ガス排出量を削減するための対策の緊急性を説く市長候補は少なく、憂慮すべき状態にあることを非政府団体の持続可能な市研究所(ICS)の調査が提示したと3日付アジェンシア・ブラジル(1)が報じた。
ブラジルや南米での火災急増は国際的にも注目されている。サンパウロ市やポルト・アレグレ市などで起きた煤などが混じる「黒い雨」や煤や灰自体が降る「煤の雨」、ブラジリアなどでも観測された煙害は火災を身近な問題として感じさせたはずだ。
ミナス州カトリック大学(PUC)教授兼研究者で生物学者のコンラド・ガルディノ氏は、火災との闘いの主力は州政府や連邦政府とその関連団体だが、地方自治体も何らかの取り組みを採用できるし、大気質(空気の質)悪化などは市長候補が関連対策を議論する動機になり得ると主張する。
ICSによると、2030アジェンダ(2015年に制定した国連ミレニアム目標)達成には排出量の半分以上を削減する必要がある市は伯国の人口上位10市中五つあり、他市も最低30%の削減が必要だという。
持続可能性に関するミレニアム目標は17あり、二酸化炭素換算の温室効果ガス排出量の目標は1人あたり0・83トンだが、民間環境団体のネットワークの気候観測所が温室効果ガス排出量推定システム(SEEG)で得た2022年のデータでは、マナウス市3・06トン/人、リオ市2・03トン/人など、人口上位10市は皆、目標を大幅に超えている。最良のサルバドールでも、目標を43%強上回る1・10トン/人だ。
リオ市のIbmec大学建築・都市計画コース教授のマルコ・アントニオ・ミラッツォ氏は、交通やエネルギー消費、廃棄物管理の3分野は市役所の取り組みが重要な成果をもたらす可能性があると強調。自転車レーンや公共交通機関の路線を増やし、車の利用を減らすための対策が不可欠とし、公共交通機関の電化や水素を使う車採用、公共交通機関の無料化にも言及した。
また、不適切な廃棄物処理は温室効果ガス排出量増加を招くとし、廃棄物処理への投資を増やす必要を強調し、間接的に温室効果ガス排出量削減に貢献する電力消費量削減に取り組む必要も説いた。規制されていない都市の拡張は、輸送と廃棄物に関連する問題を悪化させるとも述べている。
ICSは、ガス排出量が1・82トン/人で3位のベロ・オリゾンテ市は、2017~20年の排出量減少後、2021~22年に増加。統計を始めた2015年以降で最悪とも警告した。ガルディノ氏は、同市の大気質悪化の主因は排気ガスだが、資源採掘に伴うガスや廃棄物増加の影響も懸念。市でも汚染の少ない産業招致などの工夫が可能としている。
10位以外の州都の中ではヴィトリア市でも、21、22年の排出量が増加に転じているが、ガルディノ氏は、国民が環境問題に対して敏感になれば政治家も無視できなくなり、より強力な政策や措置を採用しやすくなるとも述べている。