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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=61

2024年10月18日

 滂沱とした涙が運平の頬を濡らした。若者たちも泣いた。原始林の開拓に着手しようとする人々が例外なく襲われる、あの不思議な程の感情の高揚を人々は経験したのだった。坐わり込んで草を握りしめて泣きじゃくっている若者もいた。涙をポロポロこぼしながら、空を渡る烏を見上げている者もいた。運平はハンカチを出して鼻をかんだ。
 サルの声がしていた。ホウホウと、フクロウが鳴くような声だった。地上で何かワメいている生物に好奇心をそそられたらしく、ザワザワと枝がゆれると十匹ほどの黒い顔が木の上からこちらを見下した。ヒトを恐しがる様子はなかった。群れはだんだん大きくなり、二百匹くらいのサ...

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