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ブラジル日系社会=『百年の水流』(再改定版)=外山脩=(40)

2024年10月29日

 罹病者はドンドン増えて行った。一軒に一人、二人は少ない方で、家族全員、枕を並べて寝込んでいる家も珍しくなくなった。
 この頃になって平野たちは、病気はマラリアと判断した。
 死者が相次ぎ、墓地の土饅頭が増えていった。棺を担ぐその家族も罹病しており、フラフラしながら運んだ。
 ある家では、夫婦は生きているだけの状態となり、そばで子供が冷たくなっていた。隣家の者が気づき、急ごしらえの棺に子供を入れ担ぎ出した。夫婦は虚ろな目で見ていた。手を合わせる気力も残っていなかったのだ。
 二月に入ると犠牲者は増えた。
 棺が不足し始めた。木を伐って板にする腕のある者が死...

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