1月8日恩赦法=リラ下院議長が先送り=審議は特別委員会に託す=ボルソナロ、議長選に動く

29日、下院憲法司法委員会(CCJ)で投票が行われる予定だった2023年1月8日の三権中枢施設襲撃事件への参加者や資金提供者への恩赦法(PL2858/22)の審議が、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)によって来年に先送りされた。同法案の審議は新設する特別委員会で行われることになるため、次期下院議長に委ねられることとなり、ボルソナロ前大統領が議長選に向けて動いている。
同日付メトロポレス(1)が報じている。
リラ下院議長はこの日、1月8日恩赦法案に関し、「下院で適切に審議されるべき内容だが、内容や置かれた状況が複雑なため、下院議長ならびに委員の選挙を控えた文脈の中では、政治論争の不当な要素となることを避けなければならない。よって、私は議長権限で、PL2858/22に関する特別委員会の設置を決めた」との声明を発表した。
1月8日恩赦法案はボルソナロ前大統領派が多くを占めるCCJで早くから進められてきたものであり、ボルソナロ氏の出馬禁止も解く可能性がある内容で、同委員会の通過は確実とみられていた。(2)
ただ、その場合、1月8日事件に関する「ボルソナロ氏の関与解明は不可避」と見るルーラ政権側の反発が高いことが予想されてきた。連邦検察庁のパウロ・ゴネ長官も、前大統領は同事件と「大いに関係ある」との見解を表明したと報じられたばかりだ。
この決定を受け、カロリナ・デ・トニCCJ委員長(自由党・PL)は、「この法案は一刻も早く承認されなければならない。それは真の正義を実現させるためであり、私たちはそのために働き続ける」と語っている。
この法案の本当の目的は、ボルソナロ氏に恩赦を出すことで、2026年の大統領選に向け、ボルソナロ氏の出馬資格を回復することにあるとかねてから見られている。ボルソナロ氏が8年間の出馬を禁止された選挙法違反の嫌疑二つは襲撃事件とは直接的な関係はない。(3)
なお、リラ議長はこの日、自身の後継者としてウゴ・モッタ下議(共和者・RP)を推薦することを発表している。モッタ氏は恩赦法案に関して、「審議すべき内容」としており、反対の立場はとっていない。同氏は三権中枢施設襲撃事件に関し、「大袈裟なところがある」とも語っている。(4)(5)
そうしたことから、ボルソナロ氏も現在、次期議長選に向けて動き始めている。同氏は上院議長に大統領在任中に良い関係を築いていたダヴィ・アルコルンブレ上議(ウニオン)を、下院議長にモッタ氏を推すことを求めている。
だが、モッタ氏は「下院を一つにまとめたい」との語っており、ボルソナロ氏に関しても恩赦の約束は保証していない。(6)
その裏には、労働者党(PT)から受けている支持の問題がある。PTは当初、下院議長選ではエルマール・ナシメント下議(ウニオン)支持に傾きかけていたが、エルマール氏がルイ・コスタ官房長官の政敵だったことで難航。そこで、かねてからPTに協力的なRP党首マルコス・ペレイラ下議が自身の出馬を断念し、モッタ氏をPTに推薦した経緯がある。
PT側からは「恩赦法案を進めないことを確信するまで、モッタ氏支持を待った方が良いのではないか」との声が上がり始めているという。(7)