Ipea=富裕者ほど軽い税負担=100万レ超でより顕著

ブラジルでは高収入者ほど多くの税金を払うという税の累進性の原則が最高所得層には達していないことが明らかになったと29日付オ・グローボサイトなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
応用経済調査所(Ipea)がセルジオ・ウルフィ・ゴベッティ氏の指揮の下で行った調査は、「税の累進性:改革案の診断」と題するテクニカルノートの一部をなす。同調査は所得税の逆進性を診断するためのもので、現在の税制は不平等を軽減せず、不平等を拡大させていることが判明した。
調査によると、最高所得層の平均税率は最大で14・2%で、社会保障負担金を除く年間平均純収入が45万レアルの人達の負担する平均税率と同等だが、年収が100万レ超だと平均税率が13・6%に下がる。
具体的に見ると、全体の0・01%にあたる年収800万レ(月収66万6千レ)の人の平均税率は12・9%で、月収6千レ(年収7万2千レ)の人の平均税率と同じだ。また、0・1%にあたる年収140万レ超の人の平均税率は13・2%、1%にあたる年収31万3千レの人の平均税率は13・6%で、月収6500レの人の13・9%以下だ。
このような差が生じるのは、この調査では、個人の所得に適用される税金だけでなく、配当金のような、企業利益に関連する税金も考慮しているからだ。これにより、収入の大半を会社の利益から得ている億万長者の税負担と他の労働者に課せられる税負担がほぼ同率になる事態が生じる。
ゴベッティ氏によると、ブラジルの社会ピラミッドの頂点に位置する最高所得層には累進課税は意味をなさず、ほとんどの先進国や主要なラ米諸国で実施されている税率と比べても非常に低いという。
調査では、国内で施行されている種々の利益課税制度に関する国税庁の調査に基づいて計算された実効IRPJ/CSLL(法人所得税及び純利益に対する社会貢献)税率の推定値を使用した。
平均税率が最大となるのは、企業が支払う税金が全て株主の負担となり、年収が51万6千レの人の場合で、個人的に払う額と株主である会社に対して負担する税金の平均税率は14・2%となる。
また、それを超えると税率が下がり始め、全体の0・2%にあたる年収100万レ超の人の場合は13・3%となる。
企業が払う税金の半分が株主負担となる場合で年収42万3千レの人の平均税率は13・2%で、全額が株主の負担となる場合よりも小さい。また、税金の半分が株主負担で年収100万レ超の人は10・3%となる。
ゴベッティ氏によると、累進課税が機能しない主要因は年収100万レ超の人達の主な収入源となる利益や配当に対する非課税で、収入の大半が金融投資や企業の利益と配当で、給与収入は微々たるものという人達の税負担率は低くなる。
政府の経済スタッフは、税制改革の第2段階で企業の利益と配当からも所得税を徴収できるようにする意向だ。同調査では、配当への課税免除や簡便化された税収申告などの特別税制による実効課税の低さにより、2015~19年に徴収されなかった税金を約1800億レアルと推定している。
ゴベッティ氏は、企業の名目税率を引き下げ、個人の配当に段階的に課税し、企業の特別制度間の差別化を縮小する構造改革を擁護しているが、実行過程が複雑なため、一時的な措置として億万長者への最低課税も考えられるとしている。