ルーラがトランプ祝福=内心複雑だが国交通常=マスクやCOPで懸念

現地時間の5日に行われた米国大統領選で、ドナルド・トランプ氏がカマラ・ハリス氏を破って当選。4年ぶりに大統領に返り咲くことになった。これにより、ルーラ政権や伯国への影響が注目されている。6日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
トランプ氏の当選決定後、ルーラ大統領はブラジリア時間の6日午前8時56分、当選を祝福する投稿をSNSプラットフォーム「X」で行った。
「大統領返り咲きおめでとうございます。民主主義は人民の声であり、常に尊重されなければなりません。世の中をより平和にし、発展、繁栄するため、世界では対話が必要となるでしょう。あなたの政権に幸と成功のあることを」とルーラ氏は綴っている。(2)
しかし、ルーラ大統領としては複雑な結果となった。トランプ氏は政敵のボルソナロ前大統領、さらに昨年末の就任以来いまだに直接面会する機会さえないアルゼンチンのミレイ大統領の敬愛する国際的な保守派のリーダーだ。ルーラ氏は今回の大統領選に関し、ハリス氏当選を望む発言を行っており、フェルナンド・ハダジ財相やマウロ・ヴィエイラ外相らを大統領官邸に招いて行った4日の会議でも、「トランプ氏が当選した場合はどうするか」を議題の一つとしていた。
連邦政府側は「トランプ氏が当選しても米国との関係は変わりない」との見解を示している。米国はブラジルにとり、中国に次ぐ貿易相手国であり、関係悪化は避けたいところでもある。ただ、ブラジルが、トランプ氏と強い敵対関係にある中国を含むBRICSのメンバーであり、ルーラ氏が中国への強い接近姿勢を見せていることで米伯関係にブレーキがかかるのではないかとの懸念は少なくない。(3)
加えて、ガザ問題に関し、トランプ氏と懇意にあるネタニヤフ首相の政権によるイスラエルのパレスチナ人民への攻撃を、ルーラ氏が「ジェノサイド」と繰り返し批判していることも気になるところだ。
また、ブラジルが2025年に開催するパラー州ベレンでの環境会議「COP30」に関しても、気候変動問題は中国が米国の競争力をそぐためにつくりあげたものと主張するトランプ氏が、会議で決議される環境対策を骨抜きにするとの懸念が上がっている。(4)
もう一つ気になる点としては、トランプ氏がSNSプラットフォーム「X」のイーロン・マスク氏を閣僚として迎える意向を示していることだ。マスク氏は最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事によるボルソナロ派の支持者たちのアカウント凍結に反対。これが、ブラジルでの1カ月以上にわたるX運営停止につながったが、ネットでの言動を強みにしているトランプ氏や米国議会が「表現の自由」をブラジルに迫る可能性も考えられる。(5)
他方、ボルソナロ前大統領もトランプ氏の当選後、「歴史的な勝利。民主主義と自由にとり画期的な1日」との言葉で祝福を行っている。ボルソナロ氏としては、トランプ氏の当選を、1月8日三権中枢施設襲撃事件での自身への恩赦、さらに8年間禁止となっている出馬権の回復につなげたいところだ。
ただ6日付CNN(6)によれば、2026年の大統領選出馬どころか、トランプ大統領の就任式への出席すら難しいと報じられている。ボルソナロ氏には国外逃亡の恐れがあるとして、最高裁がパスポート提出を命じたため外国渡航は許されていない。