GRU空港=PCCが自動小銃で射殺=司法取引中の内部告発者=衝撃映像で動揺広がる

麻薬密売者とのビジネスで資金洗浄などに関わっていたとして告発され、国内最大規模の犯罪集団「州都第一コマンド(PCC)」に関して司法取引を行っていた聖市在住の不動産業者が8日、サンパウロ州グアルーリョス空港で射殺された。国内最大の空港で惨事が起きたことや衝撃映像の拡散で動揺が広がっている。同日付G1サイト(1)などが報じている。
事件は8日16時頃、グアルーリョス空港第2ターミナルの到着ロビー外側の路上で起こった。恋人との旅行から戻ってきた企業家のアントニオ・ヴィニシウス・ロペス・グリッツバック氏(38歳)がスーツケースを転がしながら歩いていたところ、到着客を乗せるために並んでいた車の列に二重駐車していた黒のフォルクスワーゲンGOLから武装した男性2人が降り立った。
それに気づいたグリッツバック氏は慌てて逃げようとしたが、犯人たちは殺傷力の高い長身銃で最低29発連写。グリッツバック氏は10発を浴びて即死した。
監視カメラが録画した光景はすぐに拡散され、国民に衝撃と恐怖を与えた。グリッツバック氏の周辺にいたアプリ・タクシーの運転手2人と女性1人も銃撃に巻き込まれ、重傷で病院に運ばれたが、アプリ・タクシーの運転手1人は9日に亡くなっている。
グリッツバック氏は暗号通貨ビジネスや不動産売買による資金洗浄に関わっていたとされ、サンパウロ州検察局との間でPCCの資金洗浄計画に関する司法取引を行い、各種の情報や証拠となる書類、ワッツアップのメッセージなども提供していた。司法取引の場で同氏は「脅迫を受けている。もっと厳重な警備を」と求めていたが、襲撃されて亡くなった。
グリッツバック氏が司法取引を行うに至ったきっかけは、2021年12月27日に殺害されたPCC構成員2人の殺害を命じた嫌疑で起訴され、被告となったことだ。殺された2人とは、アンセルモ・ビシェリ・サンタ・ファウスタ氏(通称カラ・プレッタ)と同氏の運転手だったアントニオ・コロナ・ネット氏(通称セン・サンゲ)だった。
サンパウロ州検察局によると、グリッツバック氏は3月に司法取引を行うことで合意が成立し、15日前にも最新の証言を行っていたという。それはPCCが行っていた3千万レアルに及ぶ資金洗浄計画で、麻薬の売買で稼いだ金で住宅やガソリンスタンドなどを売買していたという。同氏はその他にも知っていることがあり、さらなる供述を行おうとしていたという。同氏の供述内容にはカラ・プレッタ殺害事件で起訴を免れられるように金銭を要求した殺人課警官の不正告発も含まれていた。彼の供述により、麻薬密売防止抑圧局の市警2人も逮捕されている。
グリッツバック氏の供述はPCCの犯罪裁判でも強い影響力を持っており、司法当局は今回の件がPCCや警察が絡んだ証人抹殺ではないかと見て捜査を行っている。
検察側はグリッツバック氏が司法取引を始めた3月頃からPCCによる攻撃を恐れ、同氏に対する警備態勢を強化していたが、供述が進むにつれ、同氏自身も警備強化を要請していた。
警察によると、グリッツバック氏は殺された時、100万レアル相当の貴金属や時計などを運んでいたという。内訳は現金620レアルにプラチナの指輪11個、金のブレスレット六つ、ネックレス二つ、宝石付の指輪九つ、ロレックスの時計だった。(2)
その後の調べでグリッツバック氏が生前、PCCが300万レアルで同氏の殺害を依頼していた録音を市警に届けていたことがわかっている。また、グリッツバック氏暗殺時に同氏の警備担当を務めていた軍警4人の内3人が、事件発生時に空港に赴いていなかったとして責任を問われ、停職処分となっている。(3)(4)(5)
なお、軍警は9日までに、事件に使われた火器類(2種類のライフル計3丁、拳銃1丁、車のナンバープレート、銃弾と充填器)の入ったバックパックや置き去りにされた車1台、警備の軍警らが使用していた車2台を押収している。また、事件が国際空港で発生したことなどもあり、捜査には連警も参加している。(6)(7)