EUメルコFTA=欧州4国が反対表明=最終承認へ険しい道

メルコスルと欧州連合(EU)との歴史的な自由貿易協定(FTA)は、25年にわたる交渉を経て、12月初旬に合意が発表された。だが、この合意に複数のEU加盟国が反対しており、現在、脅威にさらされていると19日CNNブラジル(1)が報じた。
フランスは、EU加盟国の中でも最も強く反対を示している国の一つだ。エマニュエル・マクロン大統領は、協定発表の前日、内閣を通じて、この合意を「受け入れがたい」と批判した。フランスが強く反発する理由の一つは、メルコスル諸国から輸入される農産物が安価であるため、これがフランス国内の農業市場に悪影響を与える可能性があることだ。同国の農業団体は、すでに数年間にわたり、EUと南米の間で進められてきた交渉に反対しており、協定合意と発表された時点で、再び抗議活動が盛り上がった。これに対し、フランス政府は農業セクターの保護を優先し、現行の協定内容では受け入れられないと表明した。
また、ポーランドも協定に対する反対を表明。ドナルド・トゥスク首相は、11月末に「ポーランドは受け入れない。我々は一人ではない。南米諸国との自由貿易協定をこの形で受け入れることはない」と述べた。この発言は、ポーランド国内での農業保護を巡る懸念から来ている。特に、同国の農業従事者は、メルコスルから輸入される安価な農産物が国内市場を圧迫し、収入減少を招くのではないかと不安視している。
さらに、アイルランドも協定に対して慎重な立場を取っている。ピーター・バーク企業・通商・雇用相は、メルコスル協定がもたらす潜在的な影響について警鐘を鳴らした。同相は、「農業従事者は持続可能性に多大な投資をしており、すべての市場において同じ高い基準が求められるべきだ」と述べ、協定に対する懸念を表明。バーク大臣はEU内での農産物輸入における公平な競争条件を確保する重要性を強調しており、これもまた農業従事者の利益を守るために必要な措置だとされている。
また、イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、現行の形では協定はイタリアの支持を得られないと明言しており、調整が必要であると強調した。
一方、ブラジルはEU側の反発に強い反論を展開している。ルーラ大統領は、「我々は製品の品質や安全性に対する中傷を決して受け入れない」と述べ、南米産の農産物の優れた品質を強調した。
これらの反対意見により、合意の行方は不透明な状況にある。EU理事会は、この協定が各国政府の承認を得るために重要な機関となる。理事会で合意が拒否されるためには、少なくとも4カ国が反対し、それらの国々の人口がEU全体の35%以上を占める必要がある。現時点では、フランス、ポーランド、イタリアなどが反対の立場を取っており、これらの国々の人口を合わせるとEU全体の人口の約36・5%に相当する。従って、これらの国々の反対を受ければ、協定が成立しない可能性も十分にある。このように、メルコスルとEUとの自由貿易協定は、現在も、最終的な承認が得られるかどうか、不確実な状況にある。