site.title

小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=102

2024年12月21日

 日本もドイツと戦っている。しかし、この原始林の中では、そんな事はどうでも良かった。
 オットーは一週間ほど居て、自分の農園へ戻った。バウルーから刑事が行った筈だが、一度行って居なかったらもう二度と来ないさ、と言った。
「有難う。もうちょっと大きいベッドがあればもっと居るんだがね」
 オットーらしい憎まれ口を叩いた。馬に拍車をかけた。谷の曲り角で小さくなった彼の姿が振り向いて手をあげた。祖国が戦争をしている男の後姿は淋しそうに、見送る運平の目に焼きついた。
 そろそろ雨期が始まる。オットーがいた日々も人々は綿の植付けに忙しかった。雨期蒔豆も植える、米は勿論だ...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...