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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=111

2025年1月17日

 応接間へ現われた松村は運平を見て驚いたような表情を一瞬浮べた。二年前の颯爽とした精悍な男とは別人がそこにいた。弱々しそうに、何度も頭を下げ、顔色が冴えない小男がそこにいる。鼻の先だけが不自然に赤く、彼自身も気にしているようにハンカチを出して何度も何度も鼻をこすっている。酒が切れているので、その手が微かに震えていた。
 運平の用件を聞いて、
「幾ら入用ですか」
 と、松村は訊ねた。
 「八コントです」
 「ほう、大金ですな」
 松村は困ったように言った。
 「私もそれだけの金の手持ちはないのです。すぐ要るのでしょう?」
 「なるべくなら……」
 低...

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