Fiocruz=生活扶助が死者防ぐ?=米科学雑誌に論文掲載

オズワルド・クルス財団(Fiocruz)が昨年12月に発行された、米国のパブリック・リバティ・オブ・サイエンス発行の科学雑誌『PLOS Medicine』に、精神的な問題で入院していた人達の死亡率を引き下げるのに生活扶助の「ボルサ・ファミリア」が貢献していたという論文を掲載したと19日付アジェンシア・ブラジル(1)が報じた。
バイア州にある同財団の健康のためのデータと知識の統合センター(Cidacs)の研究者達による研究は、何らかの精神障害と診断された約7万人の患者を観察して得た広範なデータを利用して行われた。
研究では2008~15年に得たデータについて、入院後に生活扶助を受けた人達と受けてない人達を比較した。
その結果、生活扶助を受けた人達は心血管疾患や呼吸器疾患その他の自然死での死亡率が非受給者より11%低いことが確認された。総死亡率も7%低かったという。
2003年に導入されたボルサ・ファミリアは、ブラジルにおける過去最高の所得変移政策だ。このブログラムでは、一人当たりの世帯収入が218レアルまでの家庭には最低600レアルを支給。子供がいる場合は、年齢や授業への参加率(最低85%)、予防接種実施率などによる追加支給が行われる。
調査コーディネーターのカミーラ・ボンフィン氏は、生活扶助を受けている家庭は基礎診療や定期健診などの医療サービスへのアクセスが容易になることなどが影響していると見ている。
研究者達は、経済的な安全性や家族の安定の向上、経済的負担軽減といった、自然死や非自然死によく見られる要因に生活扶助が与える影響を分析。それによると、生活扶助は自然死による死亡率に影響を与えたことが確認された。他方、自殺や暴力、交通事故や転落などの非自然死については、統計的に有意と見なされるほどではなかったが、減少が見られたという。
また、年齢や性別も考慮すると、生活扶助の影響は女性と若い患者でより大きかったという。研究対象となった精神疾患による入院患者は10歳から100歳強までいるが、10~24歳の場合は自然死による死亡率が44%、総死亡率も21%減少。女性の場合は自然死による死亡率が27%、総死亡率も25%減少したという。
研究者達は、貧困緩和を目的とした財政援助である生活扶助が、脆弱な人口のサブグループである精神疾患による入院患者達の死亡リスクを軽減する可能性があるとし、入院患者全員に生活扶助が支給されていたら、これらの患者の死亡例の内、少なくとも4%は回避できただろうと記している。
研究者達は、精神疾患の患者は一般人口よりも平均寿命が短いことを強調し、生活扶助に関して得られた結果は部門間の予防戦略を練ることの重要性を示しているとも指摘した。