23日夜、テレビのニュースで、砲丸投げのダルリン・ラマニ(33)がパリ五輪への参加を断念したと聞き、驚くと共に、本人の心中はいかにと考えた。
ラマニという名前だけで、「ああ、彼ね」と言える人は少ないかも知れない。だが、2019年の世界選手権と2020年の東京大会では4位。2019年と2023年のパンアメリカン競技大会では優勝。2022年には室内世界チャンピオンとなり、パリではメダルもと期待されていた選手だ。
個人的には、新型コロナで競技会への参加も困難な時期に自宅近くに造った練習場で黙々と練習に励む姿を報じた番組を見た後、地道な努力の結果を見せてくれるだろうと考えていた選手でもある。
23日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)(3)によると、欠場の理由は、東京大会前にも外科的矯正治療を受けた腰部の椎骨L4とL5のヘルニアで、手術が必要だという。
6月末にトレーニングのためにスペインに渡ったが、腰の痛みで理学療法や薬物療法を受けても痛みがとれず、19日に帰国。ブラジル陸上連盟は、痛みで歩くこともままならず、近日中に手術と告げると共に、困難な時も声援を送ってくれるファンやパートナー、スポンサーに感謝した。
参加断念が大会直前だったため、砲丸投げは代役を立てられず、欠員となる。初の五輪メダルという夢がこんな形で潰えるとは誰も考えていなかっただろうし、本人の無念さやファン達に詫びたい気持ちはいかほどかと考えてしまう。
23日は、東京大会で準々決勝まで進んだものの、メダルは獲得できず帰国したビーチバレーのアナ・パトリシアの回顧談などを記したポ語の記事を読み、SNSなどで激しい批判や脅迫を受けたと知った後でもあったため、ラマニにも同じようなことが起こらないようにとも願わされた。
五輪に参加する選手達が出場権を得、メダルを手にするためにどれほど多くの犠牲を払い、苦労しているか。国を代表する立場故に求められる成績や結果を出せずに終わった時の虚無感、批判を恐れる気持ちはいかほどか。一投だにできず、術後の回復に努めながら他の選手達を母国で応援するラマニの悔しさや申し訳ないと思う気持ちはと考え出すと、切なくなる。
24日には板飛び込みの選手も練習中のケガで出場断念との報が流れた(24日付r7サイト(4)参照)。国の名前やファンの期待を背負っての練習で無理を重ね、体や心に傷を負った選手は彼らだけではないだろう。せめて、責めたり批判したりせず、1日も早い回復をと願う人達やこれまでの献身に感謝する人達に囲まれて回復期を過ごせるよう願わされる。
黙々と練習する姿や本番での力投で多くの人に夢や希望を与えてくれたラマニや本番前の緊張の中にある選手、五輪を夢見ながらかなわなかった人達、彼らを励まし、支えている人達や裏方に徹している人達にも感謝と声援を送りつつ。(み)