ベネズエラ難民の闇ビジネス発覚=ブラジルの社会保障不正取得が急増

ブラジル入国の列に並ぶ移民たち(14日付エスタード紙の記事の一部)
ブラジル入国の列に並ぶ移民たち(14日付エスタード紙の記事の一部)

 ブラジルに逃げ込むベネズエラ人が急増する中、国境を接するロライマ州パカライマ市では難民を対象とした年金や継続支払い給付金(BPC)の不正取得を支援する闇ビジネスが拡大している。ブラジルの法律は、合法的に居住する外国人に対してこれらの補助金を受け取る権利を保証しているが、一部の仲介業者は偽造書類を使用して不正に利益を得ていると14日付エスタード紙(1)が報じた。
 ベネズエラ人の補助金不正受給を手助けする〝社会保障アドバイザリー事務所〟が、パカライマ市に点在している。仲介手数料の料金相場は6千〜7千レアル(約16万〜18万5千円)で、申請から12日以内に最初の支払いが行われるという約束でサービスが提供される。
 業者に支払われる金額は通常、毎月国立社会保障院(INSS)から支給される1412レアル(約3万7千円)の最初の数回分の支払いで完済される。BPCは、年金の積み立てを行ってこなかった高齢者や、障害者に支給される福祉給付金だ。政府は25年には約600万人に約1130億レアルを支給する見込みであり、経済チームも給付不正を見直す作業を進めている。
 このパカライマでの不正行為については、連警が現在捜査中だ。ベネズエラでは最低賃金が約3・5米ドルであり、ニコラス・マドゥロ政権は、食料補助として最大40米ドル、加えて「経済戦争に対するボーナス(bônus de guerra econômica)」として90米ドルを支払うが、この額では生活は非常に厳しい。ブラジル移住は、食糧や仕事を得る機会であり、ブラジル政府の福祉支援を受けながら人生をやり直すチャンスだと考えられている。
 人口2万人の同市では、少なくとも1600人のベネズエラ人が16のスラム街に住んでいるとされている。スラム人口の拡大により補助金申請にも影響が及び、2022年末以降、同市ではBPCの支払いが急増。月額支出32万8千レアルから、2年間で130万レアルに跳ね上がった。
 今年8月のデータによると924人がこの給付を受け取っており、7400世帯、ほぼ市全体に相当する数が貧困家庭データベース「統一登録システム(Cadastro Único)」に登録されているという。
 難民を社会保障受給者にするための不正な仕組みには、偽の住所証明書や賃貸契約が利用されており、ベネズエラ人の「社会保障アドバイザー」や「コヨーテ(不法入国支援を行うあっせん業者)」が関与し、彼らは仲間をブラジルの社会保障に申請するためだけに連れて来ている。申請手続きが終わると、本来資格のない偽の受給者はカードやパスワードを仲介業者に渡し、ベネズエラに戻る。住所の偽装証明書は500レアル(約1万3千円)で購入できるという。
 2017年以降、約110万人のベネズエラ人がブラジルに不法入国し、その76%がパカライマ市を経由。同市に到着したベネズエラ人の中にはブラジルに定住し、現地生活に適応している人も多くおり、ブラジル移住を希望する友人や家族を助け、金銭的な支援を行っている。

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