《ウクライナ》サンパウロ総合大学の教授夫妻=戦渦に巻き込まれた日々語る

サンパウロ総合大学(USP)で教鞭をとるウクライナ人の教授夫妻が、ロシアによるウクライナ侵攻で戦渦に巻き込まれた事で過ごした恐怖の日々について語ったと28日付G1サイトなどが報じた。
ウクライナでの戦渦に巻き込まれたのは、同国出身でUSPの数学教授のコスチアンチン・イウセンコ氏(39)とナタリア・ゴロシュチャポワ氏(36)だ。
二人は10年近くブラジルに住んでおり、年に1度は母国ウクライナで休暇を過ごしてきた。だが、新型コロナのパンデミックで2年間、母国を訪問できずにいた。
そんな中で実現した母国訪問はかけがえのないもので、家族や旧友との親交を暖め、郷土料理に舌鼓を打つ日々を満喫していた。
だが、ブラジルに戻るはずだった1月末、新型コロナに感染した事がわかり、帰国を1カ月延ばし、2月28日の便を予約した。
そこに降って湧いたのが2月24日の軍事侵攻だ。彼らは予定通り帰国するため、速やかに国境を越えようとしたが、18~60歳のウクライナ人男性は祖国防衛のために母国に残るようにとの通達が出た。
ナタリア氏は夫を置いて祖国を離れる事ができず、侵攻直後の9日間は少しでも安全な場所にと考えて、壁が二重になっているアパートの廊下で生活。その後の2日間はアパートの地下の避難所で約40人の市民と共に過ごした。
だが、キエフ市への攻撃が激化し、周囲の市民が退避し始めた事と、店頭の食料なども欠乏し始めた事で退避を決意。
二人はキエフから400キロのテルノピリに住むナタリア氏の姉妹宅に身を寄せたが、爆撃やロシア軍との遭遇回避のために回り道したため、通常なら7時間の道のりも22時間を要した。
テルノピリでも武装兵の姿を見るし、空襲警報も鳴るが、空襲がない日もあり、戦況はより穏やかだという。また、外国に居住していた事を証明できる男性には国外退避を認める動きも出ているという。二人はウクライナを出るための書類の準備を進める一方で、昨年6月に行った帰化申請の進展にも期待している。
また、USPの学生や同僚達からは励ましと支援のメッセージや、欧州にいる友人や家族が二人を受け入れるといってくれていると知らせるメッセージまでが届いているという。USPもブラジル法務省や連邦警察、ウクライナのブラジル大使館員らと連絡を取り、二人の支援を要請したが、18~60歳男性の国外退出を禁じた通達が障壁となっているという。
同国を脱出できる日はまだわからないが、二人は今、サンパウロで過ごす穏やかな日々や、同僚達と会い、抱擁を交わす日を夢見ている。