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連載小説=自分史「たんぽぽ」=黒木 慧=第15話

2022年7月29日

 昭和三十年(一九五五年)二月十六日、寒い日であった。私は富島定時制夜間部農科をやがて卒業することが決まり、その日は気分も楽になり、映画を観に富高に行った。そこが終わって外に出た所で、誰だったか良く記憶していないけど、父、弥吉が危篤だ、早く帰れと通知を受けた。自転車で家に急いだ。父はもう冷たくなっていた。父はその半年前頃から、俺は結核にかかったらしい。俺の食器類は別にしろ、などと言って、よく咳をしていた。結局、タンが気管につまっての窒息死だったようだ。五十七才の人生であった。

    ブラジル雄飛を決心

 ちょうどその頃である。何気なしに新聞を見ていると、ふと私...

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