全国初のダウン症起業家=サンパウロ市でカフェを経営

世界ダウン症の日の21日、アジェンシア・ブラジル(1)がサンパウロ市ピニェイロス区にある、ダウン症の人達が経営するベラツッシ・カフェの紹介記事を掲載した。
カフェの店主は、母親の影響でレストラン経営を夢見て、全国商業職業訓練機関(Senac)でガストロノミー技術者コースを修了したジェッシカ・ペレイラ・ダ・シルヴァ氏(31)だ。母親などからのアドバイスでカフェ経営に切り替えた同氏は、2017年にカフェを開設し、全国初のダウン症の起業家となった。
カフェを始める前は家にばかり居て、テレビを見て過ごすという毎日だったが、カフェ開業で生活は一変し、月曜~土曜日の帰宅は毎晩7時だという。
母親を手伝って食卓を整え、ジュースやデザート、サラダを作る内に料理に惹かれていったというジェッシカ氏は、家族の支援も得て開業した店で、菓子やタルト、カフェを作り、販売するという毎日を過ごしている。
ジェッシカ氏を支えているのは家族だけではない。カフェで一緒に働くバリスタのフェリッペ・タヴァレス氏(31)もダウン症の幼なじみで、バリスタとウエイターの養成講座を出ている。店で出すカフェやカプチーノ、モカコーヒーは彼が淹れている。
ジェッシカ氏とフェリッペ氏が出会ったのは6歳の時で、障害者の親と友人の会(Apae)で出会って以来、友人として過ごしてきたが、今は恋人同士として、力を合わせている。
ジェッシカ氏の起業はダウン症の人達の能力の一例だが、ダウン症の人が労働市場に参入するのは決して容易ではないと言うのは、サンパウロ州カンピーナス市に本部があるダウン症財団で働く心理学者のパウラ・カルドーゾ・テデスキ氏だ。
同氏によると、「障害とはスティグマや偏見、人々の過度の幼児化で、インクルージョンを妨げる物理的な障壁に、態度やコミュニケーション上の障壁、ダウン症の人にはできない、彼にはその能力がないという想像上の偏見もある」という。
また、同僚や組織のリーダーの姿勢の変化は、ダウン症の人達が労働市場に溶け込むのを助けるとし、「必要以上に幼児化し、この同僚は子供だからと考え、権利や義務のない大人とはみなさないという態度は改めるべきだ」という。
同氏は、ダウン症の人も何らかのサービスをするためにいるのであり、同僚やリーダーは、他の従業員と同じように支援するという姿勢を貫くべきだと主張し、適正化は必要だが、そのことは、ダウン症の人が他の人同様に勤務時間や義務、権利を持っている労働者として扱われることを妨げないという。
ダウン症財団は1999年から、職業訓練やインクルージョンのためのサービスを提供してきた。同財団の提供する講座は、就労開始、専門実務経験、労働法に基づいた契約、仕事上のパートナーの四つのプログラムからなっている。
ダウン症や知的障害を持つ人へのサービスは統一医療サービスを通じて提供されており、家族が保健センターを探せば、その情報が財団に送られてくるという。
法律では、従業員が100~200人の会社は障害がある人を全体の2%雇用する義務があり、201~500人の会社なら3%、501~1千人なら4%、1千人以上なら5%を雇用しなければならない。この規定に従わない時の罰金は最大で20万レアルだ。
障害者憲章は、障害があることを理由に就労を制限したり差別したりすることも禁じている。