小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=6
後で訊くと、ホテルの主人はこの革命をすごく気に病んでいて、物見高いお客を極度に戒めているとのことだった。
不安な暑苦しい雑魚寝の一夜が明けた。革命に関するニュースはなかった。移民たちは昨夜通関していたので、早朝から奥地向けの駅舎へ集合した。総勢七百数十名がそれぞれのホテルや宿舎から駅へ集まり、列車に分乗し終ると十時近かった。
煙ばかり吐いて速力の出ない汽車は、フランス風赤煉瓦の建物が並ぶ市街地をしばらく鈍行し、開拓すれば立派な田園となりそうな湿地帯を横切る。雑木林に混じって、野生でもあるかのように痩せたバナナ園が見え隠れする。まだらに濃緑のアボガドの...
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